個人事業主にせよ、法人化するにせよ、対外的に何らかの書類を作成する場合に重要になるのが印鑑です。会社であれば設立時に、会社実印・銀行印・会社角印の3本セットを用意することが多いようです。まず、会社実印は法務局に設立の登記申請をする際に、併せて代表者が自分の名前において届出ます。そのため以後は、法務局で印鑑証明書を取得することができますし、会社実印の押印された書類には高い信用力が認められることになります。そして会社の設立時には、たとえ一人会社であっても事業用の口座を新たに開設することが一般的です。そのためこの口座開設の際に銀行に届け出る印鑑が、会社の銀行印です。これらの会社実印と銀行印は、偽造防止のために印相体などが使用されます。それに対して会社角印は、個人のいわゆる認印に相当するもので、社内文書の他、請求書や契約書など社外文書にも使用されますが、読みやすい字体が選ばれることが多いようです。
個人事業主の場合には、税務署に開業届を提出するだけであって、それ以外にどこかに届け出るということはありません。そのため重要な契約を結ぶ場合などには、個人の実印を押印して印鑑証明書を添付することを求められる場合があるかもしれません。この個人の実印は、例えば個人所有の不動産を売却する場合などの登記申請に、押印が必要になるなど大切なものであり、住所地の市町村に届け出ることによって、印鑑証明書を取得することができます。また銀行印は、個人名義の銀行口座を開設する際に届け出る必要があります。認印は日常よく使われるもので、特に登録はしていません。実印の押印が義務付けられる場合以外には、押印といえば認印でよいのです。ここで会社勤めをしていれば、誰でも一本はシャチハタ印を用意しているでしょう。社内文書や郵便物の受け取りなどではシャチハタでも通用しますが、委任状や契約書など、個人として正式に押印を要する書類の場合には、実印までは求められなくても、少なくとも朱肉を付ける印鑑でなければならず、シャチハタは不可とされることが一般的であるため注意が必要です。
押印書類には、時として文言の誤記や修正のために、訂正印の押印が必要になる場合があります。重要な部分、例えば売買契約書の売買金額など、訂正する部分を二重線で消した上から直に訂正印を押して修正しなければならない場合もありますが、それ以外の場合には、欄外に訂正印を押して、「〇字削除〇字加入」などと記載します。この訂正印は、会社名や氏名の横に押印したものと同じものを押印しなければならず、また買主と売主など複数名が同じ書類に押印している場合には、すべての印鑑による訂正印が必要です。